中央競馬

中央競馬の騎手よりも、どちらかといえば地方騎手のほうが喫煙者が多い。
禁煙ブームのいまのご時勢でも、1日2箱クラスのヘビースモーカーが地方競馬にはまだけつこういる。ストレスを紛らわすために吸っているとうそぶく者、さらには「減量」を理由にあげる騎手も少なくない。食べられない分タバコを吸っているのだそうだ。まあ、どれもタバコが止められないいい訳に過ぎないことはわかってはいるけれど。
ヘビースモーカーとして有名だったのは、歴代最多勝を誇る鉄人・佐々木竹見(川崎)だ。彼は現役当時、毎日4箱も吸っていたそうだから逆に心配になってしまうほど。まあ、それも含めて鉄人だったようだが……。
吸っていたのは『CAMEL』の週ミリ。さすがライトなんかじゃない。男の感じがムンムンするではないか。
ところがそんな鉄人も、ある日若手から聞いたあるウワサ壱頁にしてから極端にタバコの皇が減ったのだそうだ。
竹見氏が、調教の合間に馴染みの厩舎の大仲で一服していたときだった。

「竹見さん。輸入たばこには黒虫が卵潅産みつけてる窪忽画があるらしいつすよ」
「なんだいその黒虫ってのは?」
「黒虫ってのは、ゴキブリを細長くした感じでドロドロした肥虫類みたいな虫らしいつす。体の中に入ると卵を産みつけるらしいです」
「そら、恐ええな」
この若手はタバコを吸わないらしい。いま風のあんちゃんだ。テレビでやっていた恐い病気の特集を見たとかいってやがる。どうも俺のへビースモーカーぶりをとがめているらしい。

「いつもは体のなかにいるらしいつすけど、咳き込むとノドからでてくることもあるとかです。ヘンな咳の原因にもなるらしいつす」
「そうかい、ゴホッ、ゴホッ」
「そういえば竹見さん、よく咳しますよね」
「んなことないよ。黒虫ってどんぐらいの大きさよ?」
「大きいものだと妬センチぐらいだといわれています。タールのキッイたばこにはデカいのがいるとかです」

ちょっと具合が悪くなってきた。そういえば最近、咳がよくでるなあ……。
こりゃ困ったことになったぞ。
純粋な心の持ち主である竹見氏はすっかり恐くなり、翌日からタバコを国産に切り替えた。輸入物には黒虫がついていて恐いからだ。しかも1日3箱に大減量だ。
しかしこの若手の話はどこかおかしい。黒虫なんてのは聞いたことないし旧センチもある耐嵯黒頚みたいなのなんて表現がいかにもウソくさい。どうやら一連の黒虫話は、彼の作り話のようである。だが、何を思ったのかこの若手騎手、ざらに竹見氏を追い詰めていくのである。

「おう、おまえにいわれたから少しタバコを減らしたよ」
「でも気をつけてください。黒虫は一度体のなかに入るとなかなかいなくなりませんよ。家族にうつることもあるそうです」
「なんだよ、それじゃ母ちゃんとチューもできないじゃねえか(笑)」
「娘さんや犬猫にだってうつるかもしれませんしね.…:」
「……そういえば、ウチのワン公が死伽だ:.…。でもあれは病気だったからな」
「そうですか。マズいですね……。とにかく竹見さん、これからはタバコの量は減らしたほうがいいですよ」
竹見氏は少し涙目になっていたという。

後日、その若手に真意を聞いてみた。
彼がいうには、やはり竹見氏の体を心配し「なんとかタバコを減らしてほしいと思って作り話をした」といってくれたのである。

ところがそれから数年後……。
病気で他界した竹見氏の奥様の葬儀で、竹見さんは真剣に「黒田が悪い。俺が悪いんだ」と涙ながらに語っていたそうで、黒虫の作り話をした若手は「なんだか悪いことをした……」と後悔したそうである。

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