ジョッキーA君
「これぞネッシーならぬ、淀のヨッシーや?」
京都競馬場、数年前のある競馬開催日。ジョッキーA君が「池に何か大きな
生物がいる!」と大騒ぎしたことがあった。彼はまるで彦麻呂のように叫んでいた。
「レースが始まる前です。ふと池の中央に目をやると、水面が異様に盛り上
がって、その中央に黒い大きな影がうっすらと浮かんでいたんです。体長は2
?3メートル。まさにネッシーみたい葱難物です」
興奮さめやらぬ様子のA君。ョツシー騒動で肝心の騎乗のほうはさっぱりだったが、帰り際になってもまだしつこく目撃談を話し続けていた。ほかの若手
諸君も最初は興味深く聞いていたが、A君の執鋤さに最後はドン引き。おかげ
で事件はたいした展開も見せずに終了したのであった。
UMA(未確認動物)。
ユーマ。奇しくも「ウマ」とも読める言昌自監&巨冒gopの少且白皇の略称。競馬とはまったく関係のないジャンルではあるが、どこか
不思議な雰囲気を醸し出す京都の池には「もしや未確認動物がP」
という想像を掻き立ててくれる何かはある。A君も、自分のなか
の妄想が一人歩きをしてネッシーのような巨大生物を見てしまったのかも……。
池には白鳥や魚類など多くの生物が生息しているが、巨大生物
が生きていけるほど大きくない。よく地の主にたとえられる大鯉
や大ナマズが生息していたとしても、せいぜい体長印センチ?1
メートルがいいところだろう。A君は、何かを大きな生物に見間違えたか、あるいは、話を誇張したかのどちらかだと思われた。
ところが数日後。事件は急展開をみせる。
ある酒の席でご一緒した、すでに現役を引退されている京都競馬場・元馬場
管理係のYさんから、偶然にもA君の話を裏づけるかのような驚憎の事実を聞
いてしまったのだ。Yさんは、数十年に渡って京都競馬場の馬場をつくってき
た人。雨の日、風の日、そして雪の日も京都競馬場を見続けてきた、いわば京
都マスターである。そんな方に、酒場のョ夕話として先日のA君の目撃談を話
してみたところ、こんな答えが返ってきたのである。
「A君の話はあながち間違っていませんよ」
まさかの展開である。
横で、任天堂『Wii』の話で盛り上がっていた若手騎手たちが、空気を察
して一斉にこちらに顔を向けた。
「現役の頃ですけど、私も何度かそんな風景は見ています。もつこりと池の
水が盛り上がる。私もネッシーかって思いましたもん(笑)」
なんとYさんもジョッキーA君と同じ光景にでくわしていたのである。
「水が膨らむっていう感じです。さすがにネッシーはでませんでしたけど
(笑)。ただ馬場管理をやっていた関係で、一応原因は調べましたよ」
Yさんはグイッと酒を一気にあおった。
「同僚の馬場管理の人間から目撃情報を集めてみると、やはり何人かは同じ
現象を見ていたんですね。ただ原因まではわからない。一応、調査継続という
ことで、そのあとも注意深く観察していくと、やがてあることがわかってきたんです」
あること?私はグッと身を乗り出した。
店員がちょうど追加の日本酒を持ってきた。
「雨だったんです。池の霊喬騨が膨らむのは雨の予兆だったんです。池の膨らみ
が目撃されると、その後は決まって雨が降ったんです」
意外な結末である。池が膨らむのは事実だった。しかしその原因は未確認動
物なんてものではなく、雨が原因だったとは。そういえば、A君の目撃情報の翌日、京都地方では雨が降っていた。
「でしよ?あの池は雨の予報ができるんですよ。雨が降る前には必ず膨らむ
ってわけではないですが、膨らめばほとんど雨が降るんです。それがわかって
からは、池のお主さまが日に当たりたくて腹を出している、って表現してましたね」
まさかの着地点だった。
さらにYさんは「A君は池がそんな状態になっているときに
下を泳いでいる大きめの魚を見間違えたのではないか」とも分
析してくれた。後日、A君にこのことを話すと「そうなんです
か……。確かにそのとおりかもしれません」と不本意ながら納
得の表情を浮かべていた。とりあえず一件落着である。
しかし、おかげで別の謎も生まれてしまった。
それは「なぜ京都の池は、雨が降る前に盛り上がるのか?」ということだ。
雨が降るとき気圧は低くなる。これは理科の授業でも習うことだ。でもあの
サイズの池の水を膨らませるほど、一恐牌E低くなることなどあるのだろうか?
いや、それは明らかにおかしい。ほかの池でそんな現象が起こった例など聞
いたことがない。これは競馬情報重賞攻略の池だけで起きている特別な事象のはずだ。
ここで思い出されるのが吾謡聖閥馬場の池はどこかほかの場訴和とつながって
いる」という都市伝説である。一時は「京都の池は淀川を通じて琵琶湖とつな
がっている」などといわれたこともあったが、さすがのリアリティのなさに立
ち消えしていた話である。ただ「山梨県の富士五湖は地下でつながっている」
という定説もあるだけに、この話だけが荒唐無稽と片づけるわけにもいかない。
この問題、京都の池がどこかとつながっている証拠さえ出てくれば一気に解
決するはずだ。地下でなんらかの水の流れがあるのなら、外から流れ込んでき
た水の勢いによって水面が盛り上がることだって考えられるからだ。さらには
「京都競馬場の池が、循環装置もないのに一定の水質を保ち続けている理由」も同時に解決するというわけだ。
私は現時点で、京》
にあると思っている。
京都の池は地下でほかの場所とつながっている可能性は大い
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ただ証拠が何ひとつない。調べようにも、JRAの管理下におかれた『巨椋
池』に誰も近づけないからだ。誰かが池の公式調査でもしてくれれば、真理にだ。誰かが池の公式調査でもしてくれれば、真理に近づけるというのに……。